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マゾヒズム文学の世界

谷崎潤一郎・沼正三を中心にマゾヒズム文学の世界を紹介します。

カップルに殺される妄想

カップルに殺される妄想をよくする。
美人に単独で殺されたいというのはあまりないのに、カップルになると殺されたいという願望が強烈に強くなる。
映画で、街中で、SNSで、美しいカップルを見るといろいろ妄想するが、無惨に殺される妄想にいきつくことが多い。

殺すといってもいろいろある。

まず動機。
私を殺してこのカップルに何かメリットがあるかと考えても、なかなか思いつかないことが多い。
それで結局「余興」という動機にいきつく。
カップルのひとときの余興のために、なるべく残忍に殺されるという妄想が好きだ。
いや、殺人が、異常なサディストでもない普通の幸福なカップルの余興になるか?
しかもこんな醜い男を殺すのが。
どうだろうか?
学校にはいじめがある。
被害者の精神、肉体、尊厳を破壊するのをためらわないことが多い。
死なせてしまうことは滅多にないけど、仮に死なせても死なせた側がいっさい追求されない、怒られない、不利益がまったくなく、今まで通りに過ごせるという保証があったら、ブレーキがかからず、ためらわずに死なせてしまうことも結構多いんじゃないか。
いじめている側にいじめる必要性はない。
いじめないと何か困るかというと何もないだろう。
あれは余興だ。
いじめは余興。
そしていじめは条件がそろえば殺人になりうる。
つまり殺人は余興になりうると思う。
大人だって同じだろう。
それに、学校ではいじめている人間といじめられている人間では前者の方が確実にモテる。
女は別の男をいじめる強い男が好きなのだ。
野生動物は確実にそうだが、人間でも同じではないか。
であれば、女は自分の愛する男が他の男いじめているのを見るのが好きだろう。
他の男をいじめることのできる強く男らしい男に自分が愛されることに喜びや誇りを感じるだろう。
それから、他者への攻撃は、攻撃している集団内部の結束を強める。
たとえばケンカをしていたカップルも、彼女を狙う痴 漢が現れて彼氏がそれを撃退したら、たちまち仲直りするだろう。
協力して他者を攻撃することは、カップルの絆を深める。
だから、カップルにとって殺人は条件次第で余興になりうる。
第一の条件は、殺したことによって自分たちに不利益が一切ないという保証があること。
第二は殺したことによって罪悪感がいっさい生まれないことだ。
第一条件のクリアは残念ながら今の世界では難しい。
逆に言えば、世の中が変われば、クリアされる可能性がある。
第二の条件は、相手の生命に価値があるという認識がなくなければクリアされる。
美しい人間の場合、醜い人間に対して「同じ人間」という感覚が薄まり、生命の価値も感じにくいだろう。
だから醜い人間は第二条件をクリアするハードルが下がり、美男美女の余興殺人の対象になるには結構有利だと思う。
もし殺す相手が、自分たちに殺されることを望んでいる、ということがわかっていたら、第二条件は相当クリアしやすくなる。
むしろチャリティー、ボランティアの感覚まで加わるかもしれない。
このあたりが世の中まで浸透すれば、第一条件がクリアになる世の中がくるかもしれない。
同意書を提出した者に対する傷害・殺人は一切罪に問わない。
そんな世の中も、考えられなくはないだろう。
1回のデートに5、6人の「処刑」を組み込む。
当日アプリで募集すれば志願者はすぐに殺到する。
志願者からの報酬でデート代は賄えてたっぷりお釣りがくる。
あまりにも日常化しているので罪悪感はまったく感じず、むしろチャリティー感覚。
次第にレジャー施設、スポーツ施設、飲食店も、処刑を娯楽化するカップル向けのサービスを競って充実させる。
もちろんこういった施設の料金は志願者から徴収するので、カップルはほとんど無銭でデートを楽しめることになる。

そんなわけで、私がカップルに余興として殺される妄想をするときは、私が彼らに殺されることを望んでいることを彼らがよくわかっている、という状況にすることが多い。
だからカップル側にためらいや罪悪感が一切ない。
むしろ醜く生まれた者に対する憐れみ、慈しみのチャリティズムを感じる。
だからこちらがカップルに対して抱く感謝・恩義の気持ちも絶大なものになる。

さて、いよいよ私がカップルに殺される妄想をするときの処刑方法を具体的に述べていきたい。

・狩猟型
ここで、カップルは仮にダイアンとアレックスにする。
場所は原野。
2人は別々に乗馬している。
大型の狩猟犬が5、6頭。
私は全裸で、騎馬の前に平伏している。
10分が与えられ、私は林に逃げ込む。
2人はしばらく原野で乗馬を楽しむ。
10分後にダイアンの合図で犬が私の追跡をはじめ、やがて犬に見つかる。
私に許されているのは逃げることだけで、犬に手向かうことは許されていない。
犬は数頭で私の手足を咥えて乱暴に引きずって2人のもとに運ぶ。
私はまた騎馬の前に両手と額をついて平伏する。
ダイアンがアレックスに何かをたずね、アレックスが答える。
「右耳」と言ったようだ。
ダイアンが犬に指示を与え、一番手柄のあった犬が私の右耳を食いちぎる。
また10分が与えられ、私は林に逃げ込む。
この繰り返し。
3度目に2人の前に引きずり出されたときにはアレックスのリクエストで私の左の膝から下の肉が全部犬に食われてしまったので、そのあとは這って逃げることになった。
必死に林に向かって這っていく私の姿がさすがに滑稽だったのか、背中に2人の失笑の声が聞こえた。
カップルにいたぶられている最中に、カップルに失笑されることほどうれしいことはない。
自分にとって生涯最良の時間を与えてくれているカップルも、それなりに楽しいひとときをすごしてもらえてるんだな、というのを実感できる瞬間だ。
次は両目を食われて視力を失い、もう闇雲に這い回るしかなかった。
これもよほど滑稽だったようで、2人の楽しそうな笑い声が聞こえた。
アレックスの提案で5分が追加される。
視力を失ってもなお、最期までその美しさ、高貴さ、慈悲深さを感じさせてくれる2人に感謝しながらなんとか手探りで林に逃げ込んだ。
しかし犬は追ってこない。
余興はおしまい。
2人は本式の狐狩りに出かける時間なのだ。
2人の騎馬と犬たちが遠出をしていく足音を聞きながら私は絶命する。

ここからは、カップルは中学 生の美月と高校生の崇とする。
そして私は2人を慕う小学 生だ。
いわゆる「おねショタ」のカップル版。
相当に好きな設定だ。
場所は縁側。
2人は涼やかな浴衣姿で縁側に腰掛け、沓脱石に足を置いている。
2人の間にはお盆の上にスイカやらかき氷機やらラムネ瓶が並べてあって、たださえ美しい2人の姿を鮮やかに彩っている。
私は同じく浴衣姿だが、裸足で庭に正座し、沓脱石向かって両手と額をついて平伏している。
この設定から、いくつかの大好きな処刑方法が派生する。

・劇薬型
平伏する私にも、ラムネの瓶が渡される。
2人は専用の栓抜きで、私は小石を使って栓を抜く。
私は少しためらうが、二人がなんのためらいもなく瓶を傾けて中身を喉に流し込んだので、私もあわててそれに続いた。
2人の喉には、よく冷えたラムネが爽やかな刺激を残して通っていく。
美月の白い喉がゴクゴクとちいさくかわいく鳴り、カランカランと涼やかなビー玉の音が響く。
そのままコマーシャルになるような清涼なシーン。
本来2人だけで分かちあうべき美しい夏のひとこまに「同席」させてもらい、同時に瓶を傾ける。
これ以上の光栄があるだろうか。
ただし、私の喉に流れてくるのはラムネではなくて濃硫酸。
途方もない苦痛に襲われるが、2人の清涼なひとときを邪魔しては悪いので、笑顔でゴクゴクと喉を鳴らし、酸が内臓を壊死させるのを待ち、沓脱石の方に平伏したまま絶滅する。

・水責型
たらいに冷水をため、沓脱石の上に置いて2人に足を入れてもらい、2人の足をていねいに洗う。2人はしばしスイカやかき氷を楽しむ。
2人がスキンシップをはじめる。
小学 生が見ていいものではないので、見てしまわないように私はたらいの水に顔をつける。
それでも私の窃視癖を知っている2人は私の頭を踏んで水に沈める。
顔面がぴったりたらいの底につき、鼻がひしゃげる。
もちろん息はできない。
2人の足の圧力の強弱がリズミカルに頭蓋骨に伝わり、どんな音楽よりも心がときめく。
2人の神聖なキスの時間を分け与えられる。
これ以上の光栄はありえない。
水に浸かっていようといまいと、呼吸など許されるはずがない。
苦悶と陶酔の天国だった。
3分ほどで足が離れ、崇が私の側頭部を軽く蹴る。
平伏のときに顔をあげていい合図だ。
水から顔あげ、しかし2人の口づけの余韻をなるべく邪魔しないように静かに激しく呼吸した。
カランとビー玉の音がして2人の喉が鳴る。
すぐに美月がキスの続きをねだる。
崇は「うんうん」と言いながら美月の髪を撫でたりしている。
私に呼吸を整える時間を与えているのだ。
なんとやさしい人なのだろう。
私は意を決して再び顔を水に浸ける。
後頭部に静かに2人の足が乗る。
2人の足は私に無上の喜悦を与えるが、2人にとって足の下の感触はどうなのだろうか。
自らを深く慕う者に恵みを与える慈悲心の満足と優越感、他者の苦痛や生死を足でコントロールできる全能感。
しかしそれらも、2人が互いに与える極上の喜びから見たらく微量のスパイス程度にすぎない。
次第に2人は盛り上がり、意識から私の苦悶や生命に対する関心は薄れていき、30分ほどした頃、2人の長い口づけの間に2人の足の下で絶命する。

・ゲーム型
この場合私の衣装は白い装束とする。
その他の設定は上記と同じ。
私はやはり沓脱石の前に平伏しているが、御座を敷いている。
傍にカッター、スプーン、千枚通し、裁ち鋏、キッチン鋏、ペンチ、糸鋸、そして屑籠を用意している。
2人は飲んだり食べたりじゃれあったりしていたが、美月が無邪気な笑みを浮かべながら「じゃあー、左の乳首」と指定する。私は丁寧にお礼を述べたあと即座にキッチン鋏で左の乳首を切り落とす。
止血は許されている。
「右の耳たぶ」と崇。
しっかりと頭と額をつけてお礼を言ってからこれもキッチン鋏で。
止血をしながら切り落とした耳たぶを屑籠に捨てる。
「んー、じゃー下唇」「攻めるねー」
一瞬たりとも逡巡してはいけない。
2人が私のために考えて指定してくれているのだから、逡巡などあまりにも無礼で不敬だ。
しかしやはり出血は激しかった。
本来なら地面に平伏が当然で御座を敷くなど僭越にすぎるのだが、今日は血で庭が汚れるため御座を敷いている。
交互に切断箇所を指定してもらって、私が絶命した時に、直前に切断箇所を指定していた方が負け。
棒倒しと同じ要領だ。
崇が勝ったら次の試合の日に料理の苦手な美月が弁当を作って持って行かなければならない。
美月が勝ったら美月の大好きな体位で美月が3回絶頂するまでしてもらえるのだ。
崇はこの体位を美月のわがままを操縦するご褒美としてうまく使っている。
「今日あれしれあげるから」と言えば美月は必ずいうことをきく。
私は美月に勝たせたい。
それなのに美月は攻めてくる。
左目。
美月の美しさを仰ぎ見るためだけに存在した眼球が、美月の思いつきで体から取り外される。
あまりの光栄に震えながらお礼をいい、スプーンでぬるっと抉り出して屑籠に入れた。
崇の指定は左の小指。
子供の力ではなかなか骨が裁てない。
裁ち鋏で体重をかけて一生懸命に切り落とす。
崇が美月の髪を撫でる音。
これをされるとすぐにキスをねだるのは美月の習性だ。
柔らかく湿った音が微かに聞こえる。
なんとか切り落として小指を屑籠に入れ、すぐさま深く平伏する。
止血したいところだが、口づけの最中に命令行動以外で平伏しないのは絶対にありえない。
そのまま長いこと次の命令はなく、やがて微かに囁き合う声がして2人の気配が奥座敷へと消えた。
私はそのまま絶命する。
美月の勝ちだ。
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谷崎潤一郎全集全作品ミニレビュー 第一巻

谷崎潤一郎全集の全作品につき、ミニレビューをつけてご紹介しています。
使用している全集は、中央公論社が2015年に発行した「完全版」です。

マゾヒストにとって特に性的な刺激の強い作品については、チャートを儲け、①スクビズム(下への願望)、②トリオリズム(三者関係)、③アルビニズム(白人崇拝)の三大要素につき、3点満点で、どれだけ刺激が強いかを表示します。また、その作品にどのような嗜好のマゾヒズムが登場するのかを、「属性」として表示します。

三大要素についてはこちらをご参照ください。



刺青しせい
〼青空文庫で読めます。→こちら
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初出:明治四十三年十月号「新思潮」
形式:短編小説
時代設定:江戸時代
舞台設定:江戸、深川佐賀町(現在の江東区)
登場人物
清吉
「娘」(「女」)

スクビズム★★☆
トリオリズム☆☆☆
アルビニズム☆☆☆
属性:足、美女崇拝、美尊醜卑、悪女、拷問・残虐刑、死体陵辱

冒頭に出てくる「すべて美しい者は強者あり、醜い者は弱者であった。」という一節は有名ですが、私はこれが、谷崎の世界観を端的に表している表現だと思います。私はこれを、「美男美女賛美論」とか、「美尊醜卑」と名づけました。詳しくは谷崎序論①~③で論じています。
本作のマゾ的なクライマックスは、清吉が娘に見せる二つの絵の描写でしょう。一つは、古代中国の皇帝の寵妃が、男達が拷問にかけられたり処刑される様を見物しているもの、もう一つは若い女が桜の木の下で、足下に斃れているたくさんのの男達の死体を見つめているもの。
短い描写なのですが、美しく華やかな勝者と醜く無残な敗者の対比表現が素晴らしく、絵の世界に酔いしれてしまいます。
「女の身辺を舞いつゝ凱歌かちどきをうたう小鳥の群れ、女の瞳に溢れたる抑え難き誇りと歓びの色。」とか。
この全集第一巻の付録に、河野多恵子の解説がついているのですが、河野氏は谷崎文学を「音楽」に例えていました。が、私はやっぱり「絵画」に近いんじゃないかと思いますね、このねっとりと絡みつくような描写は、絵画的だと思います。


麒麟きりん
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初出:明治四十三年十二月号「新思潮」
形式:短編小説
時代設定:春秋戦国時代、西暦紀元前493年
舞台設定:中国、衛の国(現在の河南省の一部)
登場人物
孔子
霊公(衛の君主)
南子(王妃)

スクビズム★★☆
トリオリズム★☆☆
アルビニズム☆☆☆
属性:貴婦人崇拝、傾国の美女、悪女、匂い、拷問・残虐刑、密通

「刺青」にでてきた一枚目の絵、そのままの世界。谷崎はよほど妲己褒姒伝説が好きなんですね。でも、そりゃそうですよね。国があたかも一人の美女の所有物のように扱われる…マゾヒストなら誰でも憧れるでしょう。
孔子がこの年、衛を訪れていることは史実。霊公、南子他の登場人物も、実在したようです。
孔子といえば、道徳の神様のような存在。それを、美の女神である南子と戦わせるという分り易い展開。一時は、孔子の教えに沿った政治が行われますが、最終的には、わたしはやがての孔丘という聖人をも、妾の捕虜とりこにしてみせませう。」という宣言どおり、南子が勝ちます。当然でしょ。
衛の国は、国中の全ての富が南子に捧げられる、本来の秩序に戻ったのでした。めでたしめでたし。
南子は衛に嫁ぐ前からの恋人と密通しているため、トリオリズムに1点。


少年
〼青空文庫で読めます。→こちら
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初出:明治四十四年六月号「スバル」
形式:短編小説
時代設定:現代から二十年前(明治二十年代)
舞台設定:塙の家(現在の中央区日本橋浜町辺りか)
登場人物
「私」(「萩原の栄ちゃん」)
塙信一
光子
仙吉

スクビズム★★★
トリオリズム☆☆☆
アルビニズム★☆☆
属性:美少年、美少女、貴族崇拝、姉、緊縛、猿轡、踏みつけ、顔面への凌辱、分泌物・排泄物(唾、痰、洟汁、尿)、足、犬、外傷、生体家具(人間縁台、人間燭台、人間椅子、人間痰壺)、匂い、調教、奴隷、逆転、西洋崇拝

本作について、書きたいことは全て作品論↓に込めましたので、ぜひこちらをお読みください。

谷崎のスクビズム(1)―『少年』論~スクビズムの楽園

はじめて本作を読んだとき、手の汗で単行本がぐしゃぐしゃになったのを憶えています。
とにかくまずは本作を読んでほしい。これを読めば、自然に谷崎のいろいろな作品が読みたくなると思います。
スクビズムの諸類型がほとんどすべて盛り込まれていることもすごいのですが、やはり最後の光子による一瞬の調教。美しすぎます。


幇間ほうかん
〼青空文庫で読めます。→こちら
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初出:明治四十四年九月号「スバル」
形式:短編小説
時代設定:明治四十年
舞台設定:向島、隅田川畔他
登場人物
三平
榊原の旦那
梅吉
スクビズム★★☆
トリオリズム★★☆
アルビニズム☆☆☆
属性:催眠術、身分的転落、財産貢ぎ、愚弄、屁、CFNM、集団による辱め、寝取られ、カップルへの奉仕

幇間とは、「宴席やお座敷などの酒席において主や客の機嫌をとり、自ら芸を見せ、さらに芸者・舞妓を助けて場を盛り上げる男性の職業」だそうです。
谷崎は芸者・舞妓が大好きということもあり、これを「マゾヒストの天職」と考えたんでしょう。
もともと相場師だったマゾヒストが、女に貢ぐがゆえに没落していき、ついには天職を見つけるというもの。
トリオリストとしても、非常に刺激的でな部分があります。
「一度彼は自分の女を友達に寝取られたことがありましたが、其れでも別れるのが惜しくつて、いろいろと女の機嫌気褄を取り、色男に反物を買つてやつたり、二人を伴れて芝居に出かけたり、或る時は其の女と其の男を上座へ据ゑて、例の如く自分がお太鼓を叩き、すつかり二人の道具に使はれて喜んで居ます。
たまらん…蕩けそう…。


秘密
〼青空文庫で読めます。→こちら
初出:明治四十四年十一月号「中央公論」
形式:短編小説
時代設定:現代(明治末期)
舞台設定
松葉町のお寺(現在の台東区松が谷辺り)
浅草公園
三友館(浅草に実在した映画館)
「女」の家(中央区日本橋蠣殻町辺りか)
登場人物
「私」(Mr.S.K.)
「女」
スクビズム★☆☆
トリオリズム☆☆☆
アルビニズム☆☆☆
属性:女装、目隠し

女装です。



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初出:明治四十三年十月号「新思潮」
形式:戯曲
時代設定:江戸時代、享保十三年(西暦1728年)
舞台設定:江戸、麹町貝塚(現在の千代田区隼町辺り)

スクビズム★☆☆
トリオリズム☆☆☆
アルビニズム☆☆☆
属性:美少年、美少女、美尊醜卑、人力車夫

江戸に持ち込まれた象(史実です)を見物に来た町人の会話からなるコメディ。
踊屋台に乗っている美少女に憧れている若者が、争ってその屋台を挽いています。身分の高い若旦那もかなりの数混じっています。
江戸から古い価値観が消え去り、退廃的な風俗が蔓延し、やがて「刺青」に描かれる「美しい者が幅を利かせる時代」がやってくる、そんな予兆を随所に感じさせます。


信西
初出:明治四十四年一月号「スバル」
形式:戯曲
時代設定:平安時代末期、平治元年十二月
舞台設定:信楽山(現在の滋賀県甲賀市)
平治の乱の最中に切腹した信西の最期を題材にとったもの。


あつもの
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初出:明治四十五年七月―(大正元年)十一月「東京日日新聞」
形式:長編小説
時代設定:現代(明治末期)
舞台設定
橘の家(濱町;現在の中央区日本橋浜町)
美代子の家(小田原)
東京帝国大学(本郷)
川甚(柴又に現存する料理屋)
柳光亭(両国柳橋に現存する高級料亭)
淺川の家(現在の中央区茅場町辺りか)
歌舞伎座(中央区銀座に現存)
千束町(吉原遊郭の一部;現在の台東区千束)
登場人物
橘宗一
美代子
宗一の父(宗兵衛)、母(お品)
美代子の父(清助)、母(お綱)
学友(佐々木、杉浦、山口、野村、中島、清水、大山)
お静
帝大生達のほろ苦い青春物語。
封建的な制度・風習のため自由恋愛を抑圧された結果、若者達は遊興に走り、堕落していきます。
物語は八月から翌年の四月まで。移ろう季節に染まる東京市の鮮やかな景観・風俗がたっぷりと盛り込まれています。


悪魔
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初出:明治四十五年二月号「中央公論」
形式:短編小説
時代設定:現代(明治末期)
舞台設定:林の家(現在の文京区関口辺りか)
登場人物
佐伯
叔母
照子
鈴木

スクビズム★★☆
トリオリズム★☆☆
アルビニズム☆☆☆
属性:洟汁、自慰、三角関係

親戚の年下の娘が洟をかんだハンカチを置いていったのをいいことに、それをぺろぺろしてしまいます。


続悪魔
初出:大正二年一月号「中央公論」
形式:短編小説
時代設定:現代(明治末期)
舞台設定:林の家(現在の文京区関口辺りか)
登場人物
佐伯
叔母
照子
鈴木

スクビズム★☆☆
トリオリズム★☆☆
アルビニズム☆☆☆
属性:巨女、足、三角関係、親戚の年下の娘に恥ずかしい本を発見され詰られる

本作が発表されてから十年後の大正十二年、関東大震災が発生しますが、本作の冒頭には、その予言としか思えない表現があります。谷崎は明治二十七年の明治東京地震以来激しい地震恐怖症だったそうです。
「悪魔」とその続編である本作の設定は、「父のいない母娘と一つ屋根の下に暮らす二人の学生」というもの。どうしても数年後に発表される夏目漱石の「こゝろ」とオーバーラップします。
「悪魔」と本作にインスパイアされた二次創作↓を書いてみましたので、ぜひ読んでみてください。

「悪魔」「続悪魔」の二次創作


The Affair of Two Watches
〼青空文庫で読めます。→こちら
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初出:明治四十三年十月号「新思潮」
形式:短編小説
時代設定:現代(明治末期)
舞台設定
東京帝国大学(本郷)
原田の下宿(千駄木)
「私」の家(箱崎町)
登場人物
「私」(山崎禄造)

原田
父、母
何気ない大学生の日常を描いたコメディ。
タイトルの候補は他に「Three Men With Two Watches」または「Historian's History」。
「時計事件もえゝが、(中略)女の事を書いたが好え。」という科白から、谷崎がすでに、自分が何を書くべきか、よくわかっていた事が伺えます。
本筋とは何の関係もなく「あの女の■なら嘗めるがナ私や。」という衝撃の科白が…。
※■は規制文字・「米」の下に「異」


朱雀日記
初出:明治四十五年四月―五月「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」
形式:随筆
京都に滞在して記した随筆。
後に関西に嵌って移住までした谷崎ですが、この時はまだ江戸っ子の視点から京都を論じています。
しまいには「京都に長く滞在して、何よりも不自由を感じるのは、東京流の女と食物の欠乏である。」だって…。


彷徨ほうこう
初出:明治四十四年二月号「新思潮」
形式:中編小説(未完)
時代設定:現代(明治末期)
舞台設定
南湖院(茅ヶ崎)
猪瀬の実家(新庄;山形県新庄市)
湯野浜温泉(現在の山形県鶴岡市)
登場人物
猪瀬弘
父、母
山岡家の人々(父、母、静江、晃一、お新)
太田
お才
東京で体を壊し、茅ヶ崎での療養を終え、北国に帰省した学生の、ひと夏の青春物語。
面白くなってきたところで未完に終わっています。


飇風へいふう
初出:明治四十四年十月号「三田文学」
形式:中編小説
時代設定:現代(明治末期)
舞台設定
吉原(現在の台東区新吉原江戸町)
東北の旅(会津・東山温泉→青森市→浅村→弘前→木造→能代港→秋田市→福島市→平潟港)
登場人物
直彦
「女」
癩病患者の兄妹

スクビズム★☆☆
トリオリズム★☆☆
アルビニズム☆☆☆
属性:サキュバス、片務的貞操強制、足

画家の男が新聞社の依頼で東北地方をスケッチしながら旅する物語。
男は旅の間、東京に残した恋人に対する操を必死で守るんですが、その恋人って吉原の遊女ですよね…。
ハンセン病患者差別に対する、谷崎の素朴な憤りが盛り込まれています。
検閲によるものか、色っぽい場面での伏字が目立ちます。


あくび
初出:明治四十五年二月「東京日日新聞」
形式:短編小説
時代設定:現代(明治末期)
舞台設定:第一高等学校(本郷)
第一高等学校の学生の青春物語。


誕生
初出:明治四十三年九月号「新思潮」
形式:戯曲
時代設定:平安時代、寛弘五年(西暦1008年)
舞台設定:宮中
後一条天皇の生誕を題材に取った怪談。


Dream Tales
〼青空文庫で読めます。→こちら
初出:明治四十五年二月「読売新聞」
形式:短編小説


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