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マゾヒズム文学の世界

谷崎潤一郎・沼正三を中心にマゾヒズム文学の世界を紹介します。

日本マゾヒズム文学の三大要素

谷崎潤一郎と沼正三、この二人のマゾヒズム文豪の作品には、驚くほど共通する特徴があります。

これはおそらくは、沼が谷崎の影響を強く受けていることによるものと思われますが、それ以上に、広く日本人のマゾヒストが共通して持っている嗜好を反映しているものと私は考えています。

私はその特徴は大きく3つあると考えていますので、これを「日本のマゾヒズム文学の三大要素」と呼ぼうと思います。それは、①スクビズム(下への願望)②トリオリズム(三者関係)③アルビニズム(白人崇拝)の3つです。「スクビズム」と「トリオリズム」は、『ある夢想家の手帖から』に紹介されている語で、男性マゾヒズムを研究したヒルシェフェルトという精神学者が名づけたようです。「アルビニズム」は『家畜人ヤプー』に登場する語で、沼自身の造語です。

それぞれについて、別の記事で詳しく紹介しますが、簡単にその意味を説明しておきます。

①スクビズム(succubism;下への願望)
スクビズムは、美しい女性(対象)に対する崇拝・憧れの気持ちの表現として、対象を上(上位)に、自らを下(下位)に置きたいという願望です。対象に跪きたい、足を舐めたい、踏まれたい、あるいは対象が身に着けていたものや排泄したものを口にしたいという願望がこれに含まれます。
また、対象に従属したい、支配されたい、対象よりも地位や能力が劣った存在でありたいという願望も、スクビズムに含まれます。
スクビズムはマゾヒズムに対する一般的なイメージとほぼ重なるといっていいでしょう。

②トリオリズム(triorism;三者関係)
トリオリズムは、対象が別の男性と関係することを望む願望です。これには、単に対象が別の男性に寝取られてしまう屈辱や喪失感を楽しむものから、神聖なはずの対象が別の男性に従属し汚されてしまうことを望むもの、あるいは対象を男性も含む夫婦やカップルにまで広げ、二人に従属することを望むものなど、諸類型があります。
マゾヒズムの語源となったドイツの作家ザッヘル・マゾッホもトリオリストとして知られ、古今東西を問わずトリオリズムはマゾヒズムの有力な支流といえます。

③アルビニズム(albinism;白人崇拝)
アルビニズムは、スクビズムの一つの類型と考えることができますが、日本のマゾヒズム文学にとって深刻といえるくらい重要な特徴ですので、独立した一要素としました。アルビニズムとは、日本人のマゾヒストが、対象を白人という人種集団にまで広げてしまい、自らを含む人種集団(日本人あるいは有色人種)が白人種に従属することを望む、あるいはそこまでいかなくとも、劣った存在であることを認識して喜ぶ願望です。
これは当然白人のマゾヒストには感じ得ないもので、欧米のマゾヒズム文学には登場しません。日本人以外の有色人種のマゾヒストがアルビニズムを抱いている可能性はありますが、谷崎・沼のようなアルビニズムの文豪が生まれたのは、日本だけでしょう。
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タグ : マゾヒズム谷崎潤一郎沼正三家畜人ヤプーある夢想家の手帖から寝取られ三者関係白人崇拝

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コメント

私はもっぱら文学作品の影響ですね。
実践的体験は皆無に等しいです。
まず「ヤプー」を読んで白人崇拝にはまりました。青春時代はこれ一色でしたね。
三者関係にはまったのはネット小説の影響も大きいですね。
どちらも最初に触れたときは「いやそれは無理!それは邪道!」と思ったものですが、そういう抵抗感が強いほど、はまったときの快楽は底知れないものがあります。
三者関係はマゾヒズムの「支流」だと思いますが、ネットの世界でも素晴らしい小説がたくさん流布していて、その前途は洋々たるものだと思います。

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スクビズムのこと

スクビズムというのは、崇拝する対象(ここでは女性)に対し、自らを、パートナーとして受け入れてくれることを望むわけではないということで、性愛として考えると、特殊ですね。そのため、変態性欲と呼ばれるのでしょうか。白野さまの想定なさっているスクビズムはこのタイプ、性愛タイプということでしょうか(どうなのでしょう)。

もちろん、性愛ではない、純粋な崇拝(このような考え、性愛的要素がない、というのはおかしいでしょうか)なのかもしれないと思います。性愛ではなくとも、異性であることが必要かもしれません(「純粋タイプのスクビズム」と、とりあえず命名)。
また、異性とか同性とかを超えた場合もあるかもしれません(超純粋タイプスクビズムと命名しても良いでしょうか)。

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